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コスパ、タイパ、スペパの次は? 「労力対効果」で考える業務効率化の重要性

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日本ではかけた費用に対しての効果を示す「コストパフォーマンス(費用対効果)」という言葉が頻繁に使われています。「コスパ」という言葉に聞き馴染みのある方も多いでしょう。そして、Z世代の若者を中心に時間効率を意識した考え方として「タイムパフォーマンス(時間対効果)」が定着しました。いわゆる「タイパ」です。このパフォーマンスシリーズは、さらに派生しており、近年では第三弾となる空間の有効活用の概念として「スペースパフォーマンス(空間対効果)」も注目ワードとされています。略称は「スぺパ」です。

コスパ、タイパ、スペパの3つの言葉は、それぞれ費用、時間、空間に対してのパフォーマンスレベルを表す指標としてビジネスシーン、日常会話を問わず使われています。効率を重視する現代の風潮を象徴するような言葉であり、今後も「●●対効果」という次なる表現が生まれるかもしれません。ではコスパ、タイパ、スペパの次は何の効率化が求められるのでしょうか。1つの可能性として挙げられるのは「労力」です。「労力対効果」はビジネスの業務効率化においても目を向けるべきポイントだと言えます。

コスパ、タイパ、スペパが世の中に浸透した経緯とは
パフォーマンスシリーズの先駆けになったコスパですが、実はこの言葉は海外では通用しない和製英語です。英語で費用対効果を表現するのは「cost-benefit performance」であり、cost-benefitは費用便益(かけた費用に対して恩恵を受ける便益)の意味があります。あるいは、「cost-effectiveness」という有効性という意味のeffectivenessと合わせることで費用対効果の意味になります。このように海外では通じない国内限定の表現であることを肝に銘じておきましょう。

日本でコストパフォーマンスという言葉が誕生したのは、1970年代の自動車業界で使われていた「価格性能比」という表現が由来だと言われています。自動車雑誌が価格に対してその性能評価をカタカナで言い表したのがコストパフォーマンスの始まりという諸説です。その後、1990年代に入りバブル崩壊による不景気に陥った日本では、「無駄な費用を削減して、効率的に利益を上げる」という考え方が定着していき、その中でコストパフォーマンスが使われるようになったと考えられています。

もともとビジネスシーンで使われる経済概念でしたが、コスパという響きも良い略称が使われ出してからは、子どもや若い女性層にまで浸透。今や誰もが知る表現となっています。そして、定着したコスパから派生して2022年に広く一般に普及した考え方がタイパです。国語辞典などを手がける出版社・三省堂が発表した「今年の新語2022」の大賞にタイパが輝きました。

物心ついた時からスマートフォンなどの情報端末に触れてきたデジタルネイティブであるZ世代は、SNSやサブスクリプションでの動画視聴においても時間効率を意識しているのが特徴です。同じ動画でも2倍速で見ることで半分の時間で同じ情報が得られるなど、そうした時間帯効果を重んじる傾向からタイパが定着しました。「会社の飲み会に行かずに自分の時間を大切にする若者が増えている」などの風潮もタイパを重要視する姿勢の表れでしょう。

そして、コスパ、タイパに次ぐ第3のパフォーマンスシリーズとして注目されるのがスペパです。日本ではコロナ禍もあり、リモートワークが一気に浸透しました。それは働き方の多様性を認めるうえでは望ましい変化だったと言えますが、多くの従業員を抱える企業にとっては保有するオフィスを持て余す事態になりました。また、自宅でリモートワークをする人にとっても家の中で理想的なワークスペースを確保するのは簡単なことではなく、空間の上手な利活用が多くの人にとって現実的な課題となっていたのです。

そうした情勢において省空間の重要性がフィーチャーされる中で、スペパという言葉も徐々に浸透しつつあります。日本はアメリカやオーストラリアなどと比べて国土が小さく、そのうえ人口密度が高い国です。それゆえ、住空間やオフィス空間にもゆとりが少ない傾向にあるだけに、日本人こそ意識して空間効率を考えるべきなのかもしれません。また、今後も狭小空間の活用などアイデアを武器にしたビジネスがより多く展開されることでしょう。

AIやテクノロジーが発展した現代だからこそ「労力対効果」を重視

コスパ、タイパ、スペパと効率化における考えがどんどんと派生していく中で、次に来ると予想されるのは果たして「何パ」なのでしょうか。コスパ、タイパ、スペパはともに社会情勢や若者世代からの関心に基づいて流行、浸透してきた経緯があるので、現代のトレンドを紐解くことで次なる流行語の予想もできるかもしれません。

現代のトレンドにおいて最大の注目株は、「デジタルシフト」だと言えるでしょう。DX、AI、RPA、IoT、ICTなどを筆頭にデジタルを軸にした新しい産業の誕生や大きな変化が社会でも起こり始めています。その中でも注目すべきは「省力化」「自動化」などの言葉です。AIなどのテクノロジーを駆使することで、業務効率化や生産性向上、リソース不足解消を目指す動きが顕著になっています。つまりは人員が動くことによる「労力」をテクノロジーによってどう最適化するかが問われている時代とも言い換えられるでしょう。

労力が1つのキーになるとすれば、次に注目されるのは「労力対効果」であると考えます。労力(エネルギー)を使わずに稼働効率を上げることを省エネと表現しますが、費やす労力を減らしたうえで高い効果を発揮する技術やビジネスモデルが今後はますます脚光を浴びる時代になるでしょう。Chat GPTなどの生成型AIの活用によって、かける労力を最小限に抑えられればそれは成果になり得ます。今後のビジネスシーンでは、自身やメンバーの労力のかけ方を最適化するうえで重要な指標になることでしょう。

ではコスパ、タイパ、スペパのように和製英語にするとしたら、何が考えられるでしょうか。1つは労力を英語にした「effort」です。努力や苦労などの意味合いもあるだけに、「エフォートパフォーマンス」が労力対効果にもっともハマる表現かもしれません。次に考えられるのは「energy」です。省エネに代表されるように、エネルギーを使わずに効率化する意識がすでに一般にも定着しているので、「エネルギーパフォーマンス」としても内容をイメージしやすいと言えるでしょう。

略語にするとエフォートパフォーマンスは「エフォパ」、エネルギーパフォーマンスは「エネパ」となります。これらが将来的に第4のパフォーマンスシリーズとして系譜に名を連ねるとは限りません。しかし、労力対効果というマンパワー導入の比率を下げたうえで成果を出す考え方を、ビジネスパーソンであれば誰もが意識をしなければいけない時代が到来しているのです。

パフォーマンスシリーズへの意識はコンコルド効果への抑止力に

コスパ、タイパ、スペパ……さらにエフォパあるいはエネパを意識することで、ビジネスシーンでは業務効率向上や無駄の削減が期待できます。それは大局的な視点で「コンコルド効果」に対する抑止力にもなるとも言えるのです。

コンコルド効果とは、すでに回収不可能になった投資を嘆き、さらに多くのリソースを投下しようとする心理傾向を指します。由来になったのは、イギリスのブリティッシュ・エアクラフト・コーポレーション(BAC)とフランスのシュド・アビアシオンなどが共同開発しようとした超音速旅客機コンコルドです。開発費に約4,000億円を投資したものの採算がとれないことが判明し、そのまま開発を進めて数兆円もの赤字を出した事例がベースになっています。

ビジネスだけでなく、ギャンブルや恋愛においても同様ですが、人間は投資に対してそれに見合ったリターンを得ようとする傾向にあります。そのため、そのまま続けても損失が増えるだけの状況に陥っても、やめられない、抜け出せない状況にハマるケースが数多くあります。トレンドワードで表現するなら「沼にハマる」ような現象です。

コンコルド効果は誰でも陥る恐れがあるので、日頃から投資やリソースへの整合性を見極める眼を持つことが求められるでしょう。そうしたストッパーとなる考え方こそが、コスパ、タイパ、スぺパ、エフォパ(エネパ)などのパフォーマンスシリーズです。投資した費用、時間、空間、労力に見合うパフォーマンスをきちんと発揮しているのかを適宜チェックする観点を持つことで、失敗が目に見えているにもかかわらず無駄を続けるような施策に陥る事態を避けやすくなるでしょう。

効率や無駄の削減に努め過ぎると、ビジネスシーンでは成功しないという意見もあります。もちろん、そうした主張も間違いではないでしょう。ただし、投資に対するパフォーマンスを評価する適正な眼は、確実にビジネス観を養ううえでは重要になります。パフォーマンスシリーズがなぜ今流行っているのかという背景を紐解けば、その時代のニーズを読み取ることにつながるでしょう。だからこそ、費用対効果、時間帯効果、空間対効果、労力対効果などを細かく意識して物事の良し悪しをジャッジできることは、これからの時代においてもビジネス成果をあげるうえでキーとなるはずです。

 

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