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SDGsとコスト削減の両側面で重要 ペーパーレスが急務と言える理由

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2015年9月にニューヨークで開催された国連持続可能な開発サミットで採択された「SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)」。161の国連加盟国の首脳が参加し、全会一致で取り決められました。17の目標と169のターゲット、232の指標で細かく構成されているSDGsは、「2030年のあるべき姿」を実現するために設定された人類の共通目標とも言えるでしょう。SDGsの概念はすでに日本社会でも浸透しつつありますが、一企業、一個人レベルでさらに考察を深めていくべき事柄になります。

SDGs的な視点が世界的に注目されている背景には、近年の社会情勢の混乱があります。コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻などの影響もあり、様々な原料価格が高騰。物価上昇は避けられず、以前までのような無駄使いや使い捨てが横行していた社会からのシフトチェンジが迫られているのです。そうしたSDGsへの共感や高騰する原料価格に対するコスト削減の気運が高まる現代において、すぐに着手すべきなのが「ペーパーレス」への移行だと言えます。

紙文化からの脱却はSDGsの目標達成においても有意義
日本製紙連合会のデータによると、2020年の日本国民1人当たりの年間の紙・板紙消費量は178.4kg。世界平均が52.3kgであることからも、日本は世界有数の紙消費が多い国だと言えます。企業のオフィスワークに目を向けても、契約書や請求書、プレゼン資料など多くに紙が使われており、日本における紙文化は深く根づいていることが分かります。

一方で紙の原料は木であり、紙を消費することで地球の資源を使用しているという自覚を持つことも大切です。紙を生産するには森林伐採を行わなければならないので、SDGsの目標の1つである自然環境の保全という観点においても紙の使用を減らすことが推奨されています。一企業の取り組みとしては地球環境においては微々たるものかもしれません。しかし、日本社会が一丸となってペーパーレス化を浸透させれば、環境問題に対する明確な動きとなるでしょう。

SDGsにおけるペーパーレスと関連性が高い項目は、

「12:つくる責任 つかう責任」
「13:気候変動に具体的な対策を」
「15:陸の豊かさも守ろう」

の3つが挙げられます。
特にターゲットとしては

「12.2:2030年までに天然資源の持続可能な管理および効率的な利用を達成する」
「13.3:気候変動の緩和、適応、影響軽減及び早期警戒に関する教育、啓発、人的能力及び制度機能を改善する」
「15.2:2020年までに、あらゆる種類の森林の持続可能な経営の実施を促進し、森林減少を阻止し、劣化した森林を回復し、世界全体で新規植林及び再植林を大幅に増加させる」

上記がペーパーレスと密接に絡んだ内容となるでしょう。

15.2のターゲットに関しては、日本社会においても緩やかな変革が行われています。2010年の日本国民1人当たりの年間の紙・板紙消費量は220.4kgだっただけに、この10年で国民1人当たりの平均消費が42.0kgも減少しています。目標としていた2020年までにある一定の成果を出しているとの見方もできます。

一方で、SDGsは明確な目標ではありますが、達成したらそれで終わりというわけではありません。より良い世界、社会を目指すうえでは常に考え続けることが大切です。持続可能な社会を形成するという視点においてもペーパーレス化は、社会変革におけるさらなる可能性を秘めている取り組みだと言えます。

ペーパーレスで業務効率化・生産性向上・コスト削減の3軸を実現
社会や企業におけるDX(Digital Transformation/デジタルトランスフォーメーション)推進において、ペーパーレスの実現は常に注目の的と言えました。業務効率化・生産性向上という2軸において働き方を大きく転換するうえでの焦点となる取り組みなのです。2023年に入りさらに社会における紙文化からの脱却を急ぐ傾向が強まってきています。その最たる理由は、原料価格の高騰や円安に伴う「紙の値上げ」です。「コスト削減」という側面においてもペーパーレス化は急務と言えるでしょう。

2022年後半から2023年の初旬にかけて、大手製紙メーカーが一斉に値上げ発表を行っています。その傾向は留まる気配もなく、2023年も各社の値上げは続く見込みとなっています。ペーパーレスへの移行が叫ばれる時代において、紙に関わる企業としてはむしろ価格を抑えてでも紙離れを加速させたくないのが本音でしょう。しかし、近年の社会情勢においては、大手製紙メーカーも値上げに踏み切らざるを得ない状況が頭痛の種になっています。

国内の大手製紙メーカーは、木材チップ・石炭・石油といった原材料に関しては輸入に頼っているのが実情です。原材料の価格自体が高騰するだけでも苦しいところに、さらに円安も重なり輸入における苦境が続いています。それゆえに、大手製紙メーカーも泣く泣く値上げを敢行し、それに伴って日本社会全体で紙を取り扱う業者の値上げが続き、紙製品を使用する企業や家庭にもしわ寄せが起きているという構図です。

社会における完全なペーパーレスの実現は簡単なことではなく、既存産業の急速な衰退を招く恐れもあることからも、慎重に検討されるべきでしょう。しかし、部分的なペーパーレスへの移行は、DX推進の観点からも、近年の社会情勢による影響からもすぐに実行すべき事項です。特に企業における形式を重んじる紙文化からの脱却は、業務効率化・生産性向上にコスト削減を加えた3つの軸において即効性のある改革となることが期待されます。

社会貢献(SDGs)と利益創出(コスト削減)の観点でのペーパーレス

会社経営における意義は、それぞれの企業によって異なります。しかし、広義においてCSR(Corporate Social Responsibility/社会的責任)に基づく「社会貢献」と企業における従業員の雇用と企業収益のための「利益創出」をまったく目指していない企業は存在しないでしょう。ペーパーレスへの移行は、そうした社会貢献(SDGs)と利益創出(コスト削減)の両面の観点を持ち合わせた施策とも言えます。

両立が難しいように思える企業における「社会貢献」と「利益創出」の大義を一挙に実現できる可能性のあるペーパーレスは、今後の社会においても加速度的に導入が進むはずです。そうした時代の流れに乗り遅れないためにも、ペーパーレス化は企業における急務であり、優先順位の高い施策となります。

2022年1月の改正電子帳簿保存法の施行に伴い、企業における国税関係の帳簿・書類のデータ保存や「電子取引」に関するデータ保存の義務化が始まっています。2023年12月末までは過去2年間に実施された電子取引について従来と同様にプリントアウトして保存という猶予処置が認められていますが、少なくとも2024年には電子保存が完全義務化する予定です。だからこそ、業務プロセスのシフトチェンジを図るうえでは今が最適なタイミングと言えるでしょう。

特に中小企業などあまり規模の大きくない会社においては、SDGsへの取り組みを自社事として捉えにくい面もあるかもしれません。しかし、ペーパーレスにおける利益創出(コスト削減)という観点で考えれば、より自社事として関心を持つ経営者の方も多いでしょう。まずは自社の業務改革という位置づけで、業務効率化・生産性向上・コスト削減を目的にペーパーレス化を検討することをおすすめします。結果的に社会貢献(SDGs)にもつながる施策になるという考え方をすることで、より導入を進める企業が増え、ひいては日本社会全体の変革にもつながるはずでしょう。

 

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