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企業がクラウド化を進めるべき理由とは? 目指すのは社内でのDX推進

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DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉が真新しくなくなり、社会変革におけるスタンダードな考えとして日本社会にも定着しつつあります。しかし、DXという言葉を「知っている」「聞いたことがある」という認知層は確実に増えているものの、「自社に導入している」「社内で活用している」という実践層で見るとまだまだ浸透しているとは言い切れないでしょう。特に契約において紙や印鑑を重視する「書面主義」の考え方は根強く、中堅中小企業を筆頭にペーパーレス化が思うように進んでいないのが現実です。

一方、大手企業やIT関連の業種に関しては、そうした契約周りまわりにおいても「クラウド」で完結する傾向が強まっています。重要な契約においても「インターネットを通じていつでも、どこでも契約の締結や承認ができる」というクラウドを活用した手法が一般化しています。ビジネスはスピードが重要なだけに、「出社しないとハンコが押せない」などの理由で契約機会を逸するようであれば、非常にもったいない話です。では社内DXを推進する上で重要となるクラウド化に関して、何を意識すべきでしょうか。

クラウド浸透を妨げる一因となっている日本の書面主義
企業におけるDX推進を果たす上で1つのキーワードになっている「クラウド化」。ネットワーク上で契約から発注、納品管理など事業活動のあらゆるフェーズを一元管理できるのであれば、バックオフィスを筆頭に企業活動の活性化・迅速化の実現が期待できるでしょう。しかし、前述のように日本においては「書面主義」の考え方がクラウド浸透の妨げになっています。日本の書面主義の文化は今後、変化を遂げることはできるのでしょうか。

▼書面主義を形成したハンコ文化は東アジアのみで定着
日本人であれば当たり前のように契約時に押すハンコですが、実は世界ではあまり浸透していない手法なのです。ハンコ文化の発祥の地は中国であり、歴史の教科書にも純金製の王印(金印)として紹介されている「漢委奴国王印」については、多くの方がご存じでしょう。しかし、金印は王族が使用していたものであり、中国の一般家庭ではハンコはほとんど浸透しいません。サインで証明が成立するケースがほとんどのようです。

ハンコの文化圏は中国、台湾、韓国、日本といった東アジアに限定されますが、一般家庭まで浸透している国で考えると日本の他には韓国と台湾だけになります。しかし、韓国においても2009年から印鑑証明を廃止し、電子認証への移行が始まりました。現在では電子認証をメインに併用する形式を取っています。このようにハンコ文化はごく限られた地域での手法と言えます。しかも、先進国はもちろん、他の世界の各国ではサインが主流なだけに、脱ハンコの波は日本にも遅かれ早かれ押し寄せてくるでしょう。

▼日本でも脱ハンコの動きが各方面で進行中
日本において重要な契約の際は、書面に署名捺印をするのが一般的でした。特に顕著なのが銀行・信用金庫・信用組合などの金融機関での場面においてではないでしょうか。預金者本人かを確認する目的で、印影の届出をしている銀行印でなければ手続きができないシステムを採用しています。不正が起きないようにした厳格なシステムではありますが、その反面で手間に感じた方も少なくないでしょう。

銀行印の例においても、紙ベースのやり取りを中心とした書面主義が迅速化・簡易化を果たす上での障害となっていることは明らかです。時代に合った契約や手続きを実践するためには、DX推進が欠かせません。銀行においても各行で脱ハンコを掲げてデジタルを取り入れる向きがあるだけに、企業単位でも自社独自のDX推進を図ることが必要になってきます。

急速に浸透し始めている日本企業のクラウド化
紙や印鑑を中心とした書面主義が日本におけるクラウド化の障壁となってはいるものの、2019年からのコロナ禍の影響もあり、日本でもDX推進における注目度は高まっています。多くの日本人に文化として定着した書面主義からの脱却は簡単ではないものの、新しい取り組みに目を向ける人々や企業の数は着実に増え続けています。企業におけるクラウド利用が当たり前の社会になれば、自ずと社会で働く人々のデジタルにおけるリテラシーも高まるはずです。日本社会も少しずつ変革を遂げようとしています。

▼クラウドサービスを利用企業は約7割、効果実感は約9割
総務省が発表した「令和3年版 情報通信白書」によると、クラウドサービスを一部でも利用している企業の割合は2020年では68.7%に達しています。2019年の64.7%から4.0ポイント上昇しており、この増加傾向はさらに顕著になるでしょう。

また、同調査ではクラウドサービスの効果についても聞き取りをしており、「非常に効果があった」または「ある程度効果があった」と回答した企業の割合は2020年で87.1%に達し、ました。約9割近い企業がクラウド導入において好意的な印象をもっていることが明らかになりました。もちろん、日本企業のクラウド化はまだまだ浸透しきれていない部分が多く、10割が利用企業になるまではさらに時間を要するでしょう。しかし、約7割が導入して約9割が効果を実感しているという現状は、変革に向けた明るい兆しだと言えます。

▼次世代の社会人は「クラウドネイティブ」がごく一般的となる
日本企業でも急速に進むクラウド化ですが、書面主義の紙や印鑑の文化に慣れ親しんだ世代からすればその適応には苦労を強いられるでしょう。しかし、今後社会人になる世代においては、むしろ小中学生の頃からクラウド環境に慣れ親しんでいます。情報通信のテクノロジーが進歩するスピードは著しいだけに、現役世代は「ついていくのがやっと」という一面があるかもしれませんが、次の世代にとっては「クラウドが当たり前」であることを認識すべきかもしれません。

2000年代はPCやガラケーが当たり前になった「デジタルネイティブ世代」と呼ばれました。2010年代になるとデバイスの中心がスマートフォンに移り変わり、「スマホネイティブ世代」が登場。そして、2022年代は「クラウドネイティブ世代」になることが予想されます。Googleの各種サービスやSNSを筆頭にクラウド上にあるアプリにスマホからアクセスして利用するのがごく当たり前の世代が世の中の枢軸を担うようになるでしょう。そうなると、近未来では「クラウドネイティブ」であることはごく一般的なことであり、クラウドを中心とした企業体制を構築することが急務だと言えるかもしれません。

 

中堅中小企業がクラウド化のために実施すべき4つの施策
次世代の社会人は「クラウドネイティブ」が主流になることを念頭に置いた場合、そうした世代から選ばれる企業になるためには、クラウド化はもはやマストだと言えます。ではクラウド化が進んでいない中堅中小企業においては、まずどんな取り組みをすべきでしょうか。2020年12月に経済産業省が公表した「DX レポート2」に基づき、中堅中小企業がクラウド化のために実施すべき4つの施策を紹介します。

▼施策1:業務環境のオンライン化
クラウド化の利点としては、場所を選ばず「いつでも、どこでも常時ネットワーク環境があればに接続して業務対応できる点が挙げられます。その環境を実現する為には上では、業務環境のオンライン化が必須です。リモートワーク対応が可能な業務環境の整備やオンライン会議システムを活用した社内外コミュニケーションのオンライン化は、実現を急ぐべきでしょう。セキュリティ対策などにおいては様々ないろいろな課題が噴出することが予想されますが、業務環境のオンライン化は第一に実現したい施策です。

▼施策2:業務プロセスのデジタル化
バックオフィスによる事務処理や契約関連の手続きなど、不可欠な業務プロセスほど簡略化・迅速化を進めたいところです。紙書類の電子化はもちろん、契約手続きにおけるクラウド対応によるペーパーレス化は、業務効率化における鍵を握ります。「紙書類対応やハンコのために出社をする」「捺印が必要なため契約締結が遅れる」という事態を防ぐためにも、社内の実務状況をきちんと整理した上で業務プロセスのデジタル化を推進すべきでしょう。

施策3:従業員の安全・健康管理のデジタル化
勤怠管理などの従業員の稼働のマネジメントにおけるクラウドサービスの活用はもちろんのこと、スマートウォッチなどの生体センサーの活用によって、現場作業者の安全や健康を管理できるスマートデバイスの導入も推奨されています。特に現場作業などが多い建設系などの場合は、より効率的で安全な労働環境の整備が急務です。従業員の安全・健康管理もクラウドサービスによって一元管理ができると、労使ともに安心材料となります。

施策4:顧客接点のデジタル化
クラウドを中心とした企業体制が当たり前となることが予想される近未来では、顧客との接点のほとんどがクラウドサービスを活用したやり取りになるでしょう。チャット機能がある連絡ツールにおける業務連絡やデータの受発信、請求書や契約書に関する電子データによる締結など、対顧客におけるスタンダードがクラウド上でのやり取りで完結できることが望まれます。

クラウド化による社内DX推進はもはや企業インフラに
「企業のクラウド化」という言葉を聞くと、小難しく先進的だと感じる方もいるかもしれません。しかし、デジタルにおけるテクノロジーは常に飛躍的な進歩を遂げているだけに、従来までの働き方を踏襲するだけでは、時代の変化の波に乗り遅れることになるでしょう。今後は「クラウドネイティブ」と呼ばれる新世代が社会進出を果たしてくるだけに、「クラウド化による社内DX推進はもはや企業インフラである」。それくらいの意識を持って時代の変革についていく必要があるでしょう。特にデジタルを得意領域としない中堅中小企業にとっても、それは決して他人事ではないのです。

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