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オフライン回帰に見る「OMO」の可能性 AI、DX全盛時代の非デジタルとの融合

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情報技術が著しい発展を遂げた2020年代において、時代を席巻したのはAIやDXといったデジタル関連のテクノロジーや概念だったことは言うまでもありません。そして、これからの時代はますますテクノロジーが発展し、デジタル領域においてさらなる技術革新が起こるでしょう。そのため、業界のトップランナーとなるべき企業は、最新のトレンドを常にキャッチアップし、次なるデジタル施策を常に先取りしていくことが求められています。

そんなデジタル全盛の時代ですが、非デジタル領域の施策を二の次、三の次と優先順位を下げてしまってもいいのでしょうか。答えは「NO」です。デジタルを駆使したオンラインが当たり前の現代だからこそ、リアルな接点を求める「オフラインマーケティング」が再び脚光を浴びています。そして、「オンラインorオフライン」という二者択一の考え方ではなく、「オンライン&オフライン」という両取りのマインドが主流になりつつあるのです。両者を融合させた「OMO(Online Merges with Offline)」の考え方に迫ります。


オンライン全盛だからこそ見直される「オフラインの価値」


DXにおいて他国に後れを取っていた日本で、オンラインミーティングの有用性を世の中に広く浸透させたきっかけはコロナ禍でした。そして、パンデミック収束後、オンラインによるコミュニケーションはビジネスシーンに定着しました。参加メンバー全員がオフィス内にそろっている状況でもオンラインで打ち合わせを実施するなど、業務上のカルチャーとして業種を問わず多くの企業で活用されているのが現状です。

しかし、オンラインがビジネスにおいて一般的にはなったものの、以前までの同空間での対面を求めるコミュニケーションが根絶されたわけではありません。むしろ、「ベースはオンライン」という考え方に移行しつつ、「オフラインでリアルな接点を持つことも同様に重要」という「オフライン回帰」の機運が高まってきています。その傾向がリモートワークとオフィスワークの比率や、ハイブリッドワークという両立の働き方に対する考えに反映されています。

Job総研「2025年 出社に関する実態調査」(https://jobsoken.jp/info/20250127/)より引用

パーソルキャリア株式会社が運営する調査機関『Job総研』が行った「2025年 出社に関する実態調査」によると、「コロナ禍後の出社頻度が減った派」が54.2%でした。それは言い換えると「リモートワークが増えた」ことを意味します。オンラインでの業務が当たり前の選択肢になっていることの証左です。そして、この回答からも日によってオフィスワークとリモートワークを使い分けるハイブリッドワーカーが多く存在することもわかります。

一方、同調査での2025年の出社頻度に関しては、「週5出社」が最多で37.6%でした。フルリモートが8.7%であり、“完全オフライン業務”の人の割合が“完全オンライン業務”の人を大きく上回る結果が出ています。つまり、社会的にリモートワークは働き方の有用な選択肢でありつつも、意図して出社を選ぶビジネスパーソンや職場でのリアルな接点を重視する企業が多いことがわかります。

また、国土交通省が2025年7月に発表した「都市鉄道の混雑率調査結果(令和6年度実績)」によると、東京・大阪・名古屋の三大都市圏における通勤通学時間帯の鉄道の混雑状況は、東京圏が139%、大阪圏が116%、名古屋圏が126%。前年に比べて東京圏は3ポイント、大阪圏は1ポイント、名古屋圏は3ポイントの増加が見られています。“痛勤”とも表される通勤ラッシュの苦痛を承知のうえで、都市圏の朝は出社するビジネスパーソンで溢れかえっている状況です。

オフィスワークとリモートワークにはそれぞれの良さがあるので、どちらが優れているという比較は容易ではありません。しかし、確実に言えることは、出社しなくても仕事ができる環境が整ってきている時代でも、「Face to Faceのコミュニケーション」がなお求められているということです。それはデジタル全盛だからこそ「オフラインの価値」が高く評価されているとも言えるでしょう。


オンラインとオフラインを融合させる「OMO」の概念

オンライン全盛の時代だからこその「オフライン回帰」があり、「オフラインの価値」が見直されている現代。しかし、どちらが良いという優劣を問うことはすでに時代にそぐわなくなってきています。結論として、どちらもビジネスシーンにおいて重要というのが1つの答えとなります。そのため、現代では「オンラインorオフライン」ではなく、「オンライン&オフライン」の施策が有効になるでしょう。

オンライン&オフラインのWebマーケティング施策の最たる例は、「OtoO(Online to Offline)」です。O2Oとも称されるこの施策は、インターネット上にあるオンラインの情報を通して、顧客をオフラインの実店舗での購買行動に誘導するマーケティング手法を意味します。主に小売やアパレル、飲食店、サービス業などで活用されています。現代においては、マーケティングにおける基本戦術とも言えるでしょう。

OtoOの応用戦術として、近年注目されているのがOMO(Online merges with Offline)です。日本語訳としては、「オンラインとオフラインの融合」。まさに「オンライン&オフライン」の考え方を体現している手法と言えます。大手企業もOMOの施策を実践しています。

具体例としては、ZOZOTOWNの「ZOZOMO」です。プラットフォーム上で実店舗の在庫確認や取り置きができたり、ショップスタッフがオンラインで顧客とやり取りできるなど、オンラインとオフラインをシームレスに結びつけている点に定評があります。また、より身近なところではマクドナルドやスターバックスなどのモバイルオーダーなども、OMOの連動性を活用した取り組みと言えます。

また、顧客獲得の手段としてウェビナーを開催する企業が、オンライン上の施策だけでは集客につながりにくいと、展示会やフェスに出向いて見込み顧客とのリアルな接点を求める動きもあります。オンラインとオフラインで顧客獲得の動きを別々にするのではなく両立することで、両方の参加者に特典をつけるなどの取り組みも可能です。「ウェビナー受講で興味は持ったけど、担当者の商談までは気が進まない」という場合にも、展示会やフェスに参加してもらうことで追客の動きもできます。

このようにOMOと表現すると小難しく感じますが、要するにオンラインとオフラインで使える手段を駆使し、連動させながら顧客獲得を狙うというシンプルな手法です。

OMOの考え方は、BtoBの領域においても極めて重要な示唆を含んでいます。たとえば、契約や受発注の業務プロセスにおいて、オンラインのシステムは徹底的な効率化をもたらします。一方で最終的な決裁が必要な交渉やトラブル解決、あるいは中長期的な信頼構築においては、依然として「人」を介したオフラインのコミュニケーションが不可欠です。オンラインでやり取りするよりも、会って直接話したほうが「話が早い」と感じるシーンは業務においても多いのではないでしょうか。

デジタルプラットフォーム上で高い透明性を持ってデータを共有・処理しながらも、要所ではFace to Faceで対話を行い、人となりの理解も含めて関係性を深めていく――。こうしたデジタルツールとオフラインの人間関係をシームレスに融合させるアプローチこそ、これからのBtoB業務における「OMO」の形となるでしょう。

単なる「業務の自動化」に留まらず、オンラインとオフラインを自在に横断することで、より強固で柔軟なサプライチェーンの構築が可能になります。マーケティング施策はどちらか一方の「or」ではなく、オンラインとオフラインを使い分けする「&」が、今後はより共通認識となっていくでしょう。


将来的にはリアルとデジタルの垣根がなくなる世界に

OMOとOtoOの明確な違いは、「オンラインとオフラインを区別するか」「オンラインとオフラインを両立するか」の違いです。OtoOは「オンラインからオフラインへ」とオンラインをオフラインへの誘導手段として役割を区別していましたが、OMOは区別することなく融合させる手法になります。顧客中心のシームレスな体験の提供を目指しており、今後は世の中のサービス全体が断絶されることのない融合の観点がキーワードになってくるのではないでしょうか。

ビジネスシーンだけでなく、日常生活においてもOMOの観点はより波及していくことでしょう。内閣府が2020年1月に発表した「ムーンショット型研究開発制度」では「2050年までに、人が身体、脳、空間、時間の制約から解放された社会を実現」という壮大な目標が掲げられています。複数の人が遠隔操作する多数のアバターとロボットを組み合わせるなど、現代よりもかなり発展した世の中が想起されていますが、その第一歩となるのがOMOの浸透ではないでしょうか。

デジタルネイティブのZ世代やα世代が台頭して活躍するこれからの時代においては、デジタル派、アナログ派など各々の好みや方針で手法を選ぶこともなくなるかもしれません。今後はますますリアルとデジタルの垣根がなくなる世界になるでしょう。最初から「&」の観点で日常にOMOが取り込まれた時代に今、移り変わろうとしているのです。

 

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