2025年10月、日本の歴史上で大きな転換期を迎える出来事が起きました。それが日本初の女性首相の誕生ーー高市早苗氏の第104代内閣総理大臣就任であることは言うまでもありません。日本のトップが女性になることで、政府が推進する女性管理職の比率向上の追い風になるなど、他国に後れを取っている「ジェンダーギャップ」の改善も期待されます。
「男尊女卑」という旧態依然の言葉に代表されるように、一歩引いて男性を立てる女性が“慎ましい”“奥ゆかしい”という考えも、確かに存在しました。もちろん、日本の女性の素晴らしさを形容した「大和撫子」に代表とされるように、ジェンダーの違いによる良き文化でもあります。しかし、少子高齢化が進む令和の時代において、女性が男性の後ろに立ち位置を固定する時代はすでに昔。社会や企業において、女性の代表や管理職が最前線に立って組織を動かしていくことが求められる時代が訪れているのです。
2025年の日本のジェンダーギャップ指数は世界118位
日本は世界と比べて労働者の賃金や管理職の割合などで男女格差が大きく、ジェンダーにまつわる考え方が先進的ではないという見られ方もあります。「亭主関白」「男は船、女は港」など、男性がリーダーで外交的、女性が補佐役で内向的というひと時代前の考え方が根づいている方もいるでしょう。
しかし、世界に目を向けると女性の偉大なリーダーが数多く表舞台に立ってきました。マーガレット・サッチャー氏が1979年という半世紀近く前にイギリス初の女性首相になっており、ドイツでは国民から「ムティ(お母さん)」の愛称で親しまれたアンゲラ・メルケル氏が16年の長期政権を築きました。日本の新総裁は女性ですが、2025年になって初めて実現したのが現状です。

内閣府 男女共同参画局「男女共同参画に関する国際的な指数」(https://www.gender.go.jp/international/int_syogaikoku/int_shihyo/index.html)より引用
グローバル化の時代においては、世界の女性進出の状況の把握・比較をすることで、日本のジェンダーギャップの課題もより明確になるでしょう。では実際の日本のジェンダーギャップはどの程度なのでしょうか。スイスの非営利財団「世界経済フォーラム」が「経済」「教育」「健康」「政治」の4分野において毎年算出している「ジェンダー・ギャップ指数」によると、日本の2025年の総合成績は148カ国中118位。下位に低迷しているのは言わずもがな、G7の中でも最下位という立ち位置です。
このジェンダー・ギャップ指数は、男性に対する女性の割合(女性の数値/男性の数値)を示したシンプルな指標であり、0だと男女完全不平等、1だと男女完全平等になります。そのため、1に近い数字になるほど順位が高くなる仕組みです。ジェンダー・ギャップ指数は先述のように4つの分野の総合成績であるため、一見すると日本は各分野の総合力が低いように思うでしょう。しかし、分野における得点差は顕著なのが実態です。
具体的には、「教育」は0.944、「健康」は0.973と世界でもトップクラスの平等に近い数値をたたき出しています。一方、残りの「経済」と「政治」が足を大きく引っ張っています。0.613の「経済」はまだましのほうですが、0.085の「政治」は壊滅的な格差が存在する状況です。そのような中で奇しくも高市首相が就任し、日本政界のトップは女性に。男女格差が非常に大きい中で数少ない貴重で優秀な女性に白羽の矢が立っているという現状が、改めて浮き彫りとなっています。
管理職に占める女性の割合は、目標の3割に及ばない13.1%

「ジェンダー・ギャップ指数」の経済分野で0.613と決して高くはない数値だった日本ですが、国内の女性活躍の実態は数字としてどのように表れているのでしょうか。厚生労働省が2025年7月に公表した「令和6年度雇用均等基本調査(※)」によると、日本企業の課長相当職以上の管理職等に占める女性の割合は13.1%。前年の同調査(12.7%)と比較して0.4ポイント上昇しており、女性管理職の比率は緩やかではあるものの高まってきているのが現状です。
しかし、変革における進捗は良好とは言い切れないでしょう。なぜなら、日本政府が掲げる女性管理職の割合を30%に引き上げる目標には到底及ばない状況だからです。この「女性管理職30%」という目標が最初に具体的に示されたのは2003年のことでした。5年ごとに策定される「男女共同参画基本計画」の中で、「2020年までに日本社会において指導的地位に女性が占める割合を30%程度までの引き上げを目指す」ことが記載されました。
2003年から20年以上の時を経て、現状はどうでしょうか。確かに女性管理職の割合は高まってきてはいるものの、思わしくない進捗から当初の2020年という目標期日も2030年まで延長されました。そして現状が13.1%であるため、3割という理想の数字には程遠い状況です。来年には10%数値が上昇するなど劇的な改善が見込めるわけではない分野のため、再度目標期日の軌道修正が入ることも想定されるでしょう。
この現状を踏まえて社会全体はもちろん、個々の企業においても変革を目指す継続的な動きが必要になります。その契機となりそうなのが、2026年4月から施行される「改正女性活躍推進法」です。女性活躍推進法では、従業員が101名以上の企業に対して、「女性の活躍を推進するための一般事業主行動計画の策定・届出」「自社の女性の活躍状況に関する情報公表」の2点を義務付けています。
そして、今回の具体的な改正内容としては、情報公表の必須項目に「男女間の賃金差異」「女性管理職比率」が付け加えられた点です。つまり、2026年4月から101名以上の規模の会社では、自社におけるジェンダーギャップの数値の公表が義務化されたことを意味します。
会社勤めの方に「自社の“男女間の賃金差異”と“女性管理職比率”を教えてください」と尋ねた際に、どれだけの方が正確な数値を答えられるでしょうか。現状では数値を把握していない人が多数を占めることが予想されます。しかし、ジェンダーギャップの数値の公表が義務化されることによって、会社勤めのビジネスパーソンはもちろん、社会で働くすべての人にとって女性活躍の数値を以前よりも強く意識し始めることが期待されます。ジェンダーギャップの数字と真剣に向き合うべきタイミングが到来しているのです。
※厚生労働省「令和6年度雇用均等基本調査」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-r06/06.pdf
潮目が変わった今だからこそ、女性の活躍を推進する流れを

日本社会が変わるためにも、ジェンダーギャップの低減が欠かせないことに多くの方がすでに気づいているでしょう。独立行政法人 労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較2025(※)」によると、他国の女性管理職の割合は、フィリピン(48.6%)、スウェーデン(43.7%)、アメリカ(42.6%)、オーストラリア(41.1%)、シンガポール(39.6%)と日本とは大きな差があるのが現状です。
しかし、現状を変えていかなければならない状況だからこそ、日本のマインドを変える絶好の機会でもあります。実際にジェンダーにおける日本人全体のマインドを変えていく絶好の機会であると言えるのは、国の指導者が変わったことに他なりません。ジェンダーギャップ指数で埋めようがない格差があった日本の政治分野において、女性のリーダーが誕生したのです。それが社会においても企業においても、同様の取り組みができないとは言い切れないでしょう。
失われた30年と言われるように日本社会に暗い影を落とす現状において、大きく潮目が変わりそうな今こそチャンスです。女性の活躍を推進する流れを、ジェンダーギャップ改善に向けた流れを、老若男女問わず1人ひとりが真剣に作っていくべき時期なのではないでしょうか。
「日本はジェンダーギャップの数値が低いから無理だよ」と諦めてしまうことは簡単です。数値はもちろん物事を推し量るうえで重要ですが、ゼロではない限り可能性はあります。真の男女平等社会を構築するうえでもっとも大切なのは、国民1人ひとりが変革を自分事として捉えるマインドチェンジなのかもしれません。
※独立行政法人 労働政策研究・研修機構「データブック国際労働比較」(P85)
https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/databook/2025/index.html
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