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AIの次はOIがバイオコンピューターを実現? オルガノイドインテリジェンスとは

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2022年11月、とあるサービスの登場に世界が驚き、沸き立ちました。OpenAIが手がける生成AI・ChatGPTです。OpenAIのリリースによると、2024年4月時点での全世界のChatGPTユーザー数は1億8050万人にのぼります。日本の人口を優に超える利用者がいる事実からも、生成AIが瞬く間に人々の暮らしに定着したことがお分かりでしょう。かつてのGoogle検索が一般に広まったように、生成AIもより身近で欠かせないサービスとなることが予想されます。

AI全盛時代に一歩踏み出している現代において、トレンドを先取りしたいビジネスパーソンが気になるのは「AIの次に来るテクノロジーは何か」ではないでしょうか。その問いに対してまことしやかに囁かれている解の1つが「OI(Organoid Intelligence/オルガノイドインテリジェンス)」です。人間の脳細胞から「バイオコンピューター」を作り出して計算や学習をする新しい技術として注目されていますが、将来的に実社会での活用は可能なのでしょうか。

オルガノイドインテリジェンスは脳細胞由来の人工脳を活用する技術

AIは「Artificial Intelligence/アーティフィシャルインテリジェンス)」の略称です。「Artificial」が「人工的な」という意味を持つため、AIが人工知能という日本訳になることを多くの方がご存じでしょう。一方で、OIの「Organoid」が何を意味する単語であるかを知っている方は少数派かもしれません。「Organoid」は、「Organ(臓器)」と接尾辞である「₋oid(~のようなもの、~もどき)」からなる造語です。

直訳では「臓器みたいなもの」となりますが、実態としては臓器・組織を模倣して作った3次元構造体を指します。多能性幹細胞を試験管内やシャーレ上で培養し、自発的な複製と分化を誘導して得られるいわば「人工臓器」と言えるでしょう。人工臓器の中でも知能を司る脳細胞を用いて作るのが脳オルガノイドであり、それを応用したテクノロジーがOI(オルガノイドインテリジェンス)です。つまり、脳の機能を人工的に作り出す技術に注目されており、さらに将来的にはOIに関連したサービスが実装される可能性が期待されます。

「人間の脳細胞を使用して脳を育て、作り出した人工脳を用いて計算や学習を行う新たな技術」というOIの概要を知ることで、今後の実用化に期待感を抱いた方も多いでしょう。脳オルガノイド研究は日進月歩で発展を遂げており、将来的にはOIの技術が各所で導入されるなど、バイオコンピューターが全盛になる時代が訪れるかもしれません。

人間の脳は優秀であり、「省エネ性」でAIを凌駕する

OIの情報を初見の方にとっては、ここまでの流れで大きな疑問が噴出しているかもしれません。それは「OI>AI」となる日が来るという両者の力関係の図式でしょう。大量の情報ソースをベースに高速で取捨選択をして、ディープラーニングによって学習深度を高められるAIは、その性能の高さから人間の仕事を奪うと考えられる脅威としての側面も有しています。特に2022年のChatGPTのサービス開始以来、人々の意識はAIの進展に対してより敏感になっているでしょう。

実際にAI導入によって単純作業の自動化、高精度なデータ分析・予測、言語の処理・理解・生成などが可能であり、業務効率化、生産性向上、経費削減などの効果が見込めます。AIをビジネスに上手く活用して座組に取り入れることで、日々の業務をよりスマートにこなしているビジネスパーソンもたくさんいるでしょう。AIの恩恵を受ける機会が増えたことで、無意識のうちに「人間よりAIのほうが優れている」と考えがちですが、AIよりも人間の脳の性能が上回っている点も少なくありません。

AIは大量のデータベースの情報をもとに、それをとてつもないスピードで精査・構築したうえで、作業を自動的に行ったり、クリエイティブを生成したりします。特に人間の言語パターンを再現するためには、大規模言語モデル(LLM /Large Language Models)という巨大なデータセットとディープラーニング技術によって構築されたシステムを活用する必要があります。それにはとてつもないエネルギーが消費され、さらにデータ容量を食うことになります。

近年はスマホやタブレットなどのデバイスの進化、さらにはSNSやサブスクリプションサービスなどの普及・拡大もあり、文字データに加えて、画像、動画などのデータの処理も不可欠です。そうした大容量データを稼働させることでAIの情報精査の力が発揮されますが、今後さらに世の中への浸透が進み、使用度合いが高まることで記録媒体の不足やエネルギー消費過多などの違った問題が生じる恐れがあります。

Facebookを運用するMataのマーク・ザッカーバーグCEOは、高度なAIサービスを提供するために大量のGPU( Graphics Processing Unit/画像処理装置)を確保したとの報道がなされています。今後はAIの動力源となるエネルギーや記録媒体の確保を巡る覇権争いが繰り広げられるなど、社会がこれまでにはなかった様相を呈する事態になるかもしれません。

AIに対して脳機能において特筆すべきは、非常に「省エネ」であることです。脳機能は、脳内神経細胞における神経細胞間のシナプス伝達の効率の変化、シナプス新生、神経細胞の樹状突起・軸索の側芽伸長という機能的、構造的変化を指す「神経可塑性」によって成り立っています。AIがチェスをする場合はディープラーニングで過去の対戦記録から膨大な戦略をインプットしたうえで強さを発揮しますが、人間はチェスの戦略をより感覚的により少ない対戦数で習得できます。

AIによって同様の脳機能の構造を再現することは現在の技術では不可能であり、そういった意味でも脳機能は生命の神秘と言えるでしょう。人間が脳内で当たり前に行っている思考を機械やデジタルでは再現しきれません。人間には自らの意思があり、それを司る脳機能が実はAIにも勝るとも劣らない武器と言えます。だからこそ、人工脳である脳オルガノイドを取り込んだバイオコンピューターなどOIを駆使した技術革新が望まれているのです。

OIの発展形は脳オルガノイドとAIの機能的な融合

人間の脳とAIの特性を踏まえたうえで、次に行きつくのは「脳オルガノイドとAIが融合したら、両者の特性を備えたよりすごい知能が生まれるのではないか」という仮説です。実際にそうした研究はすでに世界各国の研究機関やバイオベンチャーなどで行われており、実用化に向けて期待が寄せられています。

オーストラリアのスタートアップ企業のコーティカル・ラブズは、培養した人間の脳細胞とコンピューターチップを組み合わせたOIの開発において、1000万米ドル(15.5億円)ほどの資金調達をしたことを発表しています。投資ファンド側の視点に立っても、今後の発展性を見込んで巨額の投資をするだけの価値を見出している分野と言っても過言はないでしょう。

既存のAIが担っている領域を、脳オルガノイドとAIが融合したOIが担うようになれば、脳機能のアルゴリズムとAIの処理能力を駆使した非常に高度なバイオコンピューターが誕生します。もちろん、現状では脳オルガノイドは研究の真っただ中であり、OIに応用するのはまだまだ先の話になります。しかし、そうした技術や叡智を融合させることで、そう遠くない未来においてテクノロジーの革新が見込まれることは頭の片隅に置いておくべきでしょう。

人間の脳細胞を活用する点においては、生物学、または倫理的観点から真っ当なのかという意見も出ているなど、研究での成果以外にもクリアすべき課題は大きい領域だと言えます。しかし、人間とAIの良いとこ取りをしたOIを搭載したバイオコンピューターが実用化されれば、人類の暮らしも次のステージに到達できるという期待感は増していくことでしょう。OIが現在のAIのように浸透した社会に思いを馳せつつ、進歩する最新のテクノロジーをキャッチアップすることが一般のビジネスパーソンにはより求められてくるはずです。

 

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