仮想通貨の取引を支えるブロックチェーン（分散型台帳技術）ですが、今や仮想通貨の領域にとどまらず、さまざまな分野のビジネスに活用範囲を広げています。前後の取引を照合して可視化する仕組みや、サーバーへの負荷を分散させるなど、ブロックチェーン技術の導入によって課題やリスクを低減させた事例を紹介します。
【簡単解説】ブロックチェーンとは
ブロックチェーンとは「ナカモトサトシ」が制作したとされる分散型台帳技術です。従来の台帳管理技術は一つの台帳を管理者が保持し、それを唯一の台帳として保持する技術でしたが、ブロックチェーン技術は台帳の管理をインターネット上で複数の参加者と共有し維持していきます。また、取引（ブロック）が鎖（チェーン）のようにつながり、取引の前後関係に整合性を持っているため、ある時点のブロックの内容を変更すると以降のブロックもすべて変更されないと不整合が発生する構造を持ち、改ざんが極めて難しい台帳管理技術としてセキュリティの高さも注目されています。
これらの特徴を持った新しい技術であるブロックチェーンは、様々な用途や場所で活用が広がっています。
【事例①】IoT向けのセキュリティソフトへの活用
近年普及が進んでいるIoT機器ですが、同時にセキュリティの脆弱性が指摘されています。ルーターからWi-Fiネットワークに侵入しスマートフォンの決済機能で必要のないものを購入されるなど、外部からの侵入や攻撃のリスクに晒されているのが現状です。
そんな中、今年2月にわずか8MBのメモリで稼働可能な世界最小のIoT用セキュリティソフトがKeychain社から発表されました。従来のIoT機器のセキュリティは第三者の認証機関が発行した電子署名や、信頼性の高い企業が提供するセキュリティソフトなどに頼っていますが、こちらのセキュリティソフトは各機器に固有のIDを持たせ、機器同士がやりとりするデータを暗号化し通信するところにブロックチェーン技術を活用しています。最少メモリで稼働できるので安価なハードウェアにも導入可能とのことです。
【事例②】ポイント処理の負荷分散
ネット通販において顧客に付与されるポイントの管理にもブロックチェーン技術が活用されています。
ネット通販などでは、お正月やクリスマスなどのイベント期間に注文が集中しますが、商品の販売に伴うポイント加算の処理をする際にサーバーに高い負荷がかかり、ポイント処理が追いついていないケースがありました。このポイント処理にブロックチェーン技術を活用し、処理の負荷を分散したり、ポイント処理のスピードを改善する検証が行われています。
日立ソリューションズのポイント管理ソリューションにテックビューロ社が提供するブロックチェーン製品を使い、大量のトランザクション処理やポイント・電子マネーの同時管理、ポイントの付与履歴などの改ざんを防ぐセキュリティなどについて検証する予定とのことです。
【事例③】食品のトレーサビリティ
ブロックチェーンの特徴である取引の履歴管理の仕組みを応用し、食品の流通経路を記録する取り組みも始まっています。
近年、食品の移動ルートを記録し、問題があった時にそれをもとに追跡し、原因究明や商品回収等を円滑に行うためのトレーサビリティの確保が食品業界全体の取り組みとして行われていますが、食品の流通経路は材料の調達から製造、小売での販売に至るまでに多くの企業と地域を経由するため、正確で完全なトレーサビリティを確保することが難しい状況でした。
この食品のトレーサビリティーにブロックチェーン技術を活用し、サプライチェーンに関わるすべての参加企業が扱った食品の情報を記録し、それを全体に共有する仕組みを作ることで、いつどこで問題が発生したのかを追跡しやすくしています。
この取り組みはIBM社とウォルマート社が協力して検証を進めており、これまで数日から数週間かかっていた食品の追跡が数秒で可能になったとのことです。
ブロックチェーンの用途は今後も広がる
今回は、ブロックチェーンを活用してセキュリティや膨大な取引データを処理する分散処理、トレーサビリティなどに活かしている事例を紹介してきました。ほかには、不動産取引やクラウドファンディング、製品の製造過程や作品の作者を特定するための事実確認用サービスにも利用されています。
取引や処理の履歴を管理する技術として世界から注目されているブロックチェーン。これからもブロックチェーンを活用した新しいイノベーションが生まれてくることでしょう。
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