「経理業務を効率化したい」と思いながらも、どこから手をつければよいかわからず、気づけば現場の担当者任せになっている——そんな状況に心当たりはないでしょうか。
経理業務の効率化は、ツールを一つ導入すれば解決するほど単純ではありません。請求書の受領・入力・照合・承認・支払・証跡管理まで、各工程に残る非効率を一つひとつ見直すことが、効率化の出発点になります。
本記事では、経理業務が担う支払業務の全体像を整理したうえで、各工程の課題と改善のポイントを解説します。
支払業務の全工程と、非効率が生まれやすいポイント

経理部門が担う支払業務は、大きく以下の工程で構成されています。
- 請求書の受領・内容確認
- データ入力・仕訳
- 照合(発注・検収との突き合わせ)
- 承認フロー
- 支払処理(振込手続き)
- 消込・証跡管理
一見シンプルに見えますが、各工程にそれぞれ固有の非効率が潜んでいます。
受領・確認
紙やPDFで届く請求書は、担当者が目視で内容を確認する必要があります。記載ミスや項目の抜けがあれば差し戻しが発生し、その都度やりとりが生じます。
データ入力・仕訳
請求書の内容を会計システムに手入力する作業は、件数が増えるほど工数が膨らみます。入力ミスが発生すれば、後工程の照合や消込にも影響が及びます。
照合
発注書・検収データと請求書の金額・数量・条件を突き合わせる作業は、情報が複数のシステムやファイルに分散していると特に時間がかかります。
承認フロー
承認者が不在であれば作業がそこで止まります。月末に案件が一気に滞留し、経理担当者の残業が集中しやすいのもこの工程です。
支払・消込
振込データの作成や、入金との照合作業も、手作業が残りやすい工程です。消込が追いつかないと、未払い・二重払いのリスクも高まります。
証跡管理
電子帳簿保存法への対応も含め、請求書・承認記録・支払記録をどこに・どのように保存するかの設計が不十分なままでは、監査対応や内部統制の観点からもリスクが残ります。
各工程を個別に改善するだけでは不十分な理由

各工程の課題を確認すると、「AI-OCRで入力を自動化しよう」「承認システムを導入しよう」といった個別の解決策が思い浮かぶかもしれません。しかし、工程ごとの対策だけでは限界があります。
たとえば、AI-OCRで請求書の読み取りを自動化しても、照合や承認は手作業のままであれば、全体のリードタイムはほとんど変わりません。承認フローをシステム化しても、請求書がPDFで届く限り、入力作業の負荷は残り続けます。
経理業務の効率化で成果を出している企業に共通しているのは、工程を個別に改善するのではなく、業務フロー全体を一つのつながりとして見直している点です。どこかで手作業が残れば、そこがボトルネックになってしまいます。こうしたボトルネックの解消を前提に、業務フローを設計することが重要です。
経理業務効率化の3つのアプローチ

経理業務の効率化は、次の3つの観点から整理すると取り組みやすくなります。自社の現状と照らし合わせながら、確認してみてはいかがでしょうか。
1.デジタル化:紙・PDFからデータへ
最初の入り口となるのが、請求書のデジタル化です。ただし、ここで注意が必要なのは「PDF化=デジタル化」ではないという点です。
PDFはあくまでも「画像に近いデータ」であり、会計システムへの転記は依然として手作業になります。本来のデジタル化とは、請求書をXMLやJSON形式などの構造化データとして受け取り、システムが自動的に処理できる状態にすることを指します。
電子帳簿保存法の要件対応を機に、請求書の受領方法を見直している企業も増えています。この機会に、単なるPDF保存にとどまらない仕組みを整えることが、効率化の第一歩になります。
【関連記事】PDF請求書はなぜ非効率なのか?見過ごされがちな7つの課題
2.自動化:繰り返し作業を仕組みで回す
データとして取り込めるようになると、次は自動化の範囲を広げられます。
たとえば、仕訳の自動生成、支払データの作成、消込処理などは、ルールベースで自動化しやすい業務です。AI-OCRを使えばPDF請求書からのデータ抽出も自動化できますが、読み取り精度や例外処理のコストも考慮したうえで導入を検討することが重要です。
自動化によって、担当者が本来集中すべき業務である例外処理や経営分析への関与といった業務に時間を使えるようになるでしょう。
3.可視化:プロセスの状況をリアルタイムで把握する
経理業務の効率化を持続させるためには、業務の状況が見える状態であることが欠かせません。
「どの請求書がどの承認段階にあるか」「今月の支払予定はいくらか」「未消込の件数はいくつか」——こうした情報がリアルタイムで把握できれば、マネージャーはボトルネックを早期に検知し、担当者への指示も的確になるでしょう。
逆に言えば、可視化できていない経理業務は、問題が発生しても発見が遅れがちです。業務のブラックボックス化が進むと、担当者が異動・退職した際のリスクも高まります。
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優先順位のつけ方は?どこから手をつけるべきか

「デジタル化・自動化・可視化」の3つを同時に進めようとすると、プロジェクトが大きくなりすぎて前に進まないことがあります。まず手をつけるべきは、ボリュームが大きく、ルールが明確な業務です。
たとえば「毎月50件以上の請求書を手作業で入力している」「承認フローに平均3日以上かかっている」といった業務は、改善効果が出やすく、ROIも測定しやすいため、社内への説明もしやすくなります。
また、効率化ツールを導入する際は、「現在の業務フローに合わせてツールをカスタマイズする」のではなく、「ツールの標準機能に業務フローを合わせる」という発想の転換も重要です。過度なカスタマイズは導入コストと保守負担を増やし、結果として定着しないケースも多く見られます。
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効率化を阻む「3つの壁」と対処法

経理業務の効率化プロジェクトが途中で止まってしまう原因は、技術的な問題よりも組織的な問題であることがほとんどです。
壁1:現場の抵抗感
長年のやり方を変えることへの抵抗は、どの職場でも生じます。「今のやり方でも問題ない」という声に対しては、具体的な数値(入力時間、差し戻し件数、残業時間)を示し、現状の課題を客観的に共有することが有効です。
壁2:IT部門・経営層との連携不足
経理部門単独でシステム導入を進めようとすると、IT部門のリソース確保や経営層の承認取得で時間がかかります。早い段階から関係部門を巻き込み、プロジェクトオーナーを明確にしておくことが重要です。
壁3:導入後の定着不足
ツールを導入しても使われなければ意味がありません。導入後のトレーニング計画、運用ルールの整備、KPIの設定(例:請求書処理リードタイム、入力ミス件数)まで含めて設計することが、定着への鍵になります。
請求書単体ではなく、業務全体をデータでつなぐ視点

各工程の効率化を積み上げていくと、最終的に見えてくるのは「請求書だけを管理しても、業務全体は変わらない」という事実です。
発注・検収・請求・支払という一連の流れが、データとして一貫してつながっていることが、真の効率化につながります。どこかで紙やPDFが介在し、手作業による転記や照合が残る限り、工程の改善は部分最適にとどまります。
Tradeshift(トレードシフト)は、取引先との接続を起点に、発注から支払までのプロセスを一つのプラットフォーム上でデータとして管理できるソリューションを提供しています。請求書をデータとして受け取り、照合・承認・支払・証跡管理までを一貫して処理できる仕組みは、経理業務の全体最適を目指す企業にとって有効な選択肢の一つです。
経理業務の現状課題と、Tradeshiftでできることについて、まずはお気軽にご相談ください。
経理業務効率化は、全体最適で考えることが重要
経理業務の効率化は、各工程の課題を個別に解消するだけでなく、業務フロー全体をつながりとして見直すことが重要です。
- 支払業務は受領・入力・照合・承認・支払・証跡管理の6工程で構成され、それぞれに固有の非効率がある
- 工程ごとの個別対策だけでは、別の工程がボトルネックになりやすい
- デジタル化・自動化・可視化の3つのアプローチで業務フロー全体を見直す
- 効率化を阻む壁は技術より組織にある
請求書単体ではなく、発注から支払までをデータでつなぐ視点が全体最適につながります。また、経理業務の効率化は、担当者の負荷を減らすだけでなく、経営判断に必要な財務データをリアルタイムで引き出せる体制づくりにも寄与するでしょう。まずは自社のボトルネックを特定するところから始めてみてはいかがでしょうか。
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