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真の働き方改革は業務効率化から

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大手企業が続々とテレワークの導入を発表している。テレワークとは、情報通信技術(ICT = Information and Communication Technology)を活用して、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のこと。諸外国に比べ、遅れをとっていた日本でも徐々に広がりはじめている。

テレワークとオフィスへの出勤、比較してみると…

数年前の記事にはなるが、テレワークに関してのおもしろい調査結果があったのでご紹介したい。

「To Raise Productivity, Let More Employees Work from Home」
従業員の生産性を高める為に家庭で働くことを可能にしよう
https://hbr.org/2014/01/to-raise-productivity-let-more-employees-work-from-home

中国の旅行サイト大手企業Ctripが、社員数の急増に伴うオフィス拡張コストの検討を開始し、その検討が進む中で、テレワークを行った場合の生産性の低下によるコストと、オフィス拡張の為のコストで、どちらがコスト効果が高いかという議論になり、実験を行う事になった。

実験は、コールセンター部門に所属している社員のうち半数はこれまで通り会社で業務を行い、半数は自宅からテレワークを行う、というもの。これを9ヶ月間行った所、興味深い結果が出たのだ。

テレワークは通勤ラッシュから開放され時間の自由度も増える事から、会社に対する満足度が向上する事は想像していたようだが、生産性に関しては、事前の予想と反し、テレワークの方が高くなるという結果となった。具体的には、テレワークを行った社員の方が社内勤務の社員より13.5%も多くコールしており、これは約1日程余分に勤務している事と等しい。

生産性向上の要因の一つは、静かな環境で業務に集中出来たことが挙げられた。そしてもう一つ、オフィスに出勤するよりも多くの時間を業務に費やしたからというのも大きな要因であった。通勤時間が無いため、その分開始を早く、終業を遅くすることが可能で、休憩時間についても短く取っていた。しかしながら労働時間が長くなっても彼らの病気は激減した。

昨今、日本が国をあげて取り組んでいる働き方改革では、長時間労働や正社員と非正規社員の格差是正などにばかり注目が集まっているように見受けられる。しかし法律によって労働時間を規制することや待遇を改善することは本質的ではない。大事なのは業務を効率化することによって生産性を向上させ、結果的に長時間労働が不要となったり待遇が改善されることではないだろうか。

 

環境はすでに整っている

私個人としては、勿論業種によって多少の違いはあるが、組織や雇用主側が完全なテレワークと決めるのではなく、社員の生活パターンがそれぞれ違う事を認識した上で、各個人が自身の裁量で上手くテレワークを活用するという働き方が良いのではないかと考える。昨今のIT技術の進化で、テレワークは10年前とは比較にならない程やりやすくなった。スマホが普及し、安くて速いモバイルインターネット環境も整備され、SkypeやSlackなどのコミュニケーションアプリや、googleやdrop boxをはじめとするクラウドでのファイル共有サービスが登場。更には我々トレードシフトの企業間取引プラットフォームといった、これまでにはなかった全く新しいサービスも誕生しており、テレワークの環境はますます整備されてきている。それらをどれだけ上手く活用出来るかが、その会社の業務効率化と社員の会社満足度の向上に繋がる。

 

既存のやり方にとらわれてはいけない

日本では業務効率化のためのIT技術への投資がまだまだ不足であると感じる。既存のやり方に何も疑問を持たず日々業務を行っていると、改善しようという意識も生まれない。

たとえば、”ハンコ”の文化だ。社内を回る稟議書や各種申請書など、日本の会社では様々な場面でハンコを使う。しかし今やハンコは100円ショップでも大抵の名字が販売され、誰でも手に入り”なりすまし”が効くため、個人を特定するには実はあまり意味をなさない。
ITサービスを用いることによって、一つ一つの承認や処理の担当者、日時などすべてを電子的に記録した方が格段に信憑性は高い。

導入にかかるコストや期間、工数など、IT技術導入を見送る理由はいくらでもある。特に中小企業では尚更だ。我々のようなITサービスの提供側はいかに利用者のコストを抑え、導入しやすいサービスを提供出来るかが重要な使命だと思っている。

 

もっと自由な働き方を

業務を効率化し、自由な働き方をすることによって得られる会社に対する満足度の向上は、離職率の低下にも繋がる。特に小さい子供や、介護が必要な家族を持つ人であれば、通勤時間の節約と時間のフレキシビリティによるメリットを、更に多く享受する事が出来る。
東京都の小池知事は電車の通勤ラッシュ解消を目指して様々な物理的施策も検討しているが、テレワークを上手く活用し、働き方がますます自由になれば、これは確実に解消されるだろう。通勤ラッシュは百害あって一利なし。一日も早く、一人でも多くの人が通勤ラッシュから開放されることを願ってやまない。