業界リーダー達の情報サイト

経営の教科書を作ってみる

LINEで送る
Pocket

 

起業してから10年後の企業生存率は5%程度と言われています。中小企業庁、国税庁、日経新聞などが発表しているデータを見ていると、どうやら確かなようです。こんなに生存率が低くなる一番の要因は何なのでしょうか?

私は、大学卒業後に公認会計士試験に合格し、20代は会計監査の仕事をしていました。そこでは、多くの経営者から経営に関するありがたいメッセージを耳にすることができました。しかし、ふと気づいたのです。

「みんなが使える経営の教科書がない……。」

受験をするとき、そこには必ず教科書があり、練習問題があり、模擬試験があり、過去問題集があります。会社勤めをすると、そこには数多くの社内規程や業務マニュアルがあります。つまり、必ず立ち帰るべき教科書が存在しているのです。

ところが、経営者となったとたんに、困ったときに立ち帰るべき教科書がなくなるのです。教科書っぽいものはあるのですが、それはとても局所的であったり、大企業の精神哲学であったり、一人のカリスマの辿ってきた道であったりします。これらは、どれもうそではないのですが、万人が知っておくべき網羅性、汎用性のある基礎を示すものではないのです。ここに、起業生存率が低くなってしまう要因があると考えました。

 

経営課題を解決する「三層構造の五角錐」

そこで私は、「経営の教科書がないのなら、自分で作ってしまおう」と決意し、10年かけて仮説と検証を繰り返してきました。まさに科学の実験の積み重ねのようなことを地道に行ってきたのです。こうしてできたモデルは、三層構造の五角錐という形状に落ち着きました。私は、これを『五角錐経営プログラム』(PPMP ; Pentagonal Pyramid Management Program)と名付けました。

 

gokakusui

 

PPMPでは、「経営」を考える前提として、経営を支える「人」について考えます。さらに、その「人」が生きている環境である「自然」を大前提に考えます。自然と人を常に意識していれば、公害とかブラック企業といった言葉すら出てくるはずがない、というところを基礎として考えるのです。

 

keieihitosizen

 

5つの経営資源をクルクル回す

「経営」については、経営資源を「ヒト」「情報」「モノ」「カネ」「企業風土」の5つに分解して相互の関係を見ていきます。「ヒト」は「情報」を集めます。インターネットから手に入る情報も必要ですが、一番大切なのは本音です。そして、その「情報」に基づいてどういう「モノ」を作り出すべきかを考えるのです。そうしてできあがった「モノ」を必要な人に正しく届けることで「カネ」になります。「カネ」ができたら、「企業風土」に投資するのです。「企業風土」というのは、もともとなぜビジネスを始めようとしたのかという経営理念や、これから目指す姿であるビジョン、行動指針となるミッションとか、信頼、約束、ブランドというような、目に見えないけれどとても大切なものの総称です。「企業風土」に投資をすることで、経営理念が強化され、ビジョンの実現に近づき、そこに共感する「ヒト」が集まってきます。このように、5つの経営資源がクルクル回っている状態が「経営」です。

 

5sigen

 

「ヒト」「情報」「モノ」「カネ」「企業風土」――どれが欠けても回らない

この5つの経営資源は、どれか1つでも欠けてしまうとうまくいきません。例えば、「企業風土」がないままで経営をしてしまうと、稼いだ「カネ」は「ヒト」にばらまくことになります。すると、「ヒト」の行動の基準が「カネ」となってしまうため、業績が傾いたときに、何とか再建しようなどと考えず、より「カネ」をたくさん得られるであろう環境を求めて、どんどん「ヒト」が去っていってしまいます。「情報」が欠けている場合もよく見られます。世の中の本音を正確に把握しないまま、会社の思い込みで「モノ」を作って売り込もうとしている会社が実に多いのです。この状態で、インターネット販売を始めたり、セールスレターを勉強したところで、ずれた商品を広く知らしめるだけで大きな効果は期待できません。

私は、アラブ首長国連邦のドバイにお店を出しました。2015年11月から5か月間開催されるGlobal Villageという展示会にできたジャパンパビリオンの中のブースです。資金なし、商材なし、海外勤務経験なし、というないない尽くしの私が、飛行機で11時間かかる場所にある砂漠の中、文化の異なる人たちに英語で「モノ」を売るためには、教科書がなければ決意できませんでした。そのお店でやること……その第一歩は「情報」を集めることです。

次回以降、この現在進行中のドバイプロジェクトを事例として説明していこうと思います。