スマートマシン、AI(人工知能)、ビッグ・データなど、サプライチェーン・マネジメントは革新的な技術を着実に取り入れています。今回はサプライチェーン・マネジメントの現場ですでに見られる、またはこれから取り入れられるであろう、最も興味深い5つの技術を取り上げます。
1 ビッグ・データ
すべての市場において多くのデータが飛び交っていますが、サプライチェーン・マネジメントの現場ほどデータ管理が重要となる場所はないでしょう。米国の軍需製品メーカー、レイセオンの副社長、デイビッド・ウィルキンスはこう明言しました。
「顧客は、我々がより安価に、より多く提供するのを望んでいる。そのためには考えられる最高のものを可能な限り低価格で提供しなければならない。製品にかかっている一連のコストのうち、70%が材料費にかかっているとすれば、調達の仕組みをより良くすることでコストが削減できる。具体的にはデータ分析、技術コラボレーション、内部の調達戦略によって実現可能だ」
2 3Dデータの視覚化
デジタルソースの視覚化は、3Dメガネといった形ですでに行われており、データの分析スピードの向上やコスト削減につながっています。しかし今市場にあるものは氷山の一角です。
AlloSphereなどの次世代ツールは、莫大なデータをとりまとめるだけでなく、データマイニングを可能にします。AlloSphereはリアルタイムでの調査・分析を可能にした直系約9メートルの球体で、バーチャルリアリティを全く新しいレベルへと進化させます。
このようなデータ視覚化は、サプライチェーン・マネジメントの現場においても既に取り入れられています。例えばFlex Pulseは、サプライチェーンに起こり得る障害に対処するために生のデータやビデオを提供しています。それはAlloSphereのような機能はないにしても、既存のツールよりもはるかに高い連携性が期待できます。
3 3Dプリント
3Dプリントは多くの製造業や小売業で、レプリカの部品、プラスチックやメタル、その他の材料を使った製品の製造のために用いられ、配送の手間を省いています。フライフィッシングのリール、玩具、iPhoneケース等、3Dプリントによる製品はかなり多く見られるようになりました。世界経済フォーラムの「ディープシフト、テクノロジーの転換点2015」のレポートによれば、3Dプリンターで完全にプリントされた車の登場も間近であり、将来的には、家にいながらファイルをダウンロードして3Dプリンターで商品をプリントすることが可能だと述べています。
製造過程や輸送時の大気汚染や生産廃棄物の減少といった環境的要因を含め、サプライチェーンにとって顧客の要望に応じた製品の提供は必須です。特に資源が乏しい途上国では、大規模工場の雇用への依存を減らすとともに、商品開発の促進、リードタイムの短縮、コスト削減に貢献する技術に力を入れた新しいビジネスモデルを築くことができます。
4 ドローン
アマゾンや宅配業者により、ドローンでの商品配送は可能であることが証明されました。しかし実際には出荷規制が変更されない限り、ドローンは宅配において大きな役割を担うことはないでしょう。事実、アマゾンは今でも従来の方法で出荷を行っています。しかし、出荷前の製品チェックに使用されるなど、ドローンはサプライチェーンの「目」としての役割を果たしています。
ドローンは人間に比べ、商品を倉庫から運び出すのが早いというだけでなく、倉庫の管理者として、供給量や倉庫状態などについてアラートを出すこともできます。近い将来、ベルトコンベヤーと同じくらい、工場のいたるところで目にするようになるかもしれません。
5 AI
SF作家のウィリアム・ギブスンの小説に出てくる世界は、すでに現実のものとなっています。AIによって、アルゴリズムによる供給指示や、渋滞を避けるための輸送ルートの切り替えが可能となりました。例えばDHLは、サプライチェーンにおけるAIやロボット、また他の新しい物流技術について学ぶための養成所をシンガポールに開設しました。
こうした有望性がある一方で、AIはサプライチェーンにとって一連の課題を抱えているのも事実です。TechCrunchの記事にあるように、プログラマーは「マシンによる意思決定」という限界に挑戦してはいるものの、規制については技術が追いついていないようです。とはいえ、これからもAIはサプライチェーン・マネジメントにおける重要な戦略ツールとみなされていくでしょう。
これらの新興技術が成長し、より広く採用されるようになると、それらの変化にいち早く対応できる企業が市場をリードし、他の企業に大きな差をつけるようになるでしょう。これからは、よりサプライチェーン・マネジメントに特化した、チーフ・サプライチェーン・オフィサーが採用されるようになることを願います。