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デンマークの「幸せの源」は、対等であること

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ZERO TO HERO ~地方創生リーダーシップ~
【第5回 (デンマーク/シリコンバレー)】

この連載では地方創生時代にチャレンジを続ける、
日本各地の改革者を紹介しています。
それにプラスして、ほんの少しのノウハウと、
それにまつわるITのサービスも同時にシェア。

HAPPY READING!

 

続・起業初日から世界を! でも、英語が必要では?

「フィンテック特集が増えたな…」

書店に最近行ったなら、
こんな風に感じた人も多いはず。

そう、ビジネス誌の特集も、経営書の新刊も、
今多くのトピックは「フィンテック」。

文字通り「ネットの技術でフィナンシャルの世界を、
新しい時代へ」ということですが、こういった話題で
決まって登場する企業が<トレードシフト>です。

今月の本連載も先月に引き続き、
トレードシフト>の創業者である
クリスチャン・ラング氏のコメントを交えた、
特別編でお届けしたいと思います。

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「起業をするなら初日から世界を相手に」という
メッセージを軸に綴った前回でしたが、

一般的な日本人ならば、ここで
「そうはといっても言葉がね…」となります。

世界の公用語はブロークン・イングリッシュ。

が、それで海外旅行ならいざ知らず、
起業となると、たしかに躊躇しますよね?

そもそも、どうしてデンマーク人は英語が得意なんでしょうか?

「テレビとかも普通に英語でやっていたり、キャプションが英語だったりするから、
みんな自然と幼いころから覚えるんだよ。DNA的にもデンマーク人は
グローバルマインドの持ち主で、昔から世界を相手にやっていたからね。
アジアでいえばシンガポールに近いかもね」

 

幸せは「対等な社会」から

クリスチャンは、さらにこう続けます。

「英語やDNA以外にも、デンマーク人は小さなころから
学校で“チームで問題を解く”ということをやるんだ」

とても興味深いので、
さらに具体的に尋ねてみると…

「例えば『海沿いに建物をつくるとしたら一体どうすればいいのか?』というような課題を、
生徒ひとりひとりが取り組むのではなくグループで解く。
これは社会に出てからのチームワークに役立つし、
初めから世界でやっていく起業術にもつながっていると思う」

なるほど。聞けば大学の論文もデンマークでは個人での提出ではなく
数人でグループを組んで、数カ月かけて書き上げるそうです。

たしかに、これは“起業初日から世界を相手にする起業術”に効きそうですね。

「高校を卒業してから世界を見に旅に出るのもデンマーク人の特徴。
5~6割くらいの学生は、そんな旅行に出かけるよ。
最近は学生のうちに起業するというケースも多いんだ」

ちなみにデンマーク人にまつわる統計といえば、気になるのが幸福度。
常にTOP3にランクインするデンマーク人は、
世界で最も幸せな人たちともいえます。

この統計と仕事・職場・経営、はたまた起業には、どんな関係があるのでしょう?

 

デンマークの街並み
デンマークの街並み

 

みんな対等? 政府と市民が信じ合うデンマーク

「職場では誰もが“フラット”なのが、その一因じゃないかな…」

これがクリスチャンの考える、デンマーク人の幸せの源です。

「例えば僕の会社の場合、入社したてのスタッフだって、
僕のところに来て『クリスチャン、それはバカなアイデアだと思うよ』と言える。
みんな平等なんだ」

本連載でもラング氏を「クリスチャン」と記しているのは、ここが理由です。

「誰も僕のことをラングさんなんて呼ばないよ(笑)。みんなクリスチャンだ」

 

「クリスチャン」と呼ぶと初対面でも親しみがわきます
「クリスチャン」と呼ぶと初対面でも親しみがわきます

 

デンマークには<レゴ>や<カールスバーグ><マースク>など、
名だたる世界的企業がひしめきますが、そういった職場でも
肩書に関係なく、皆ファーストネームで呼び合うといいます。

「首相も、当選してもそれまでの家から引っ越さないし、
それどころかチャリ通だよ。道で気軽に市民と意見交換したりして(笑)」

「幸福度」と「対等性」、何だか説得力がありますね。

たしかにデンマークに行くと、
政府と市民が信頼し合っているのを感じられます。

その裏づけとして投票率は90%以上。
日本をはるかに上まわる数値です。

「それに関して言うと…」

最後にクリスチャンが、
政府・行政と<トレードシフト>について語ってくれました。

 

政府・行政の透明性に役立つ<トレードシフト>

企業版の<フェイスブック>と称され、
世界に急速に広まりつつある<トレードシフト>。

利用すれば世界の企業とつながれて、
おまけに請求書の発行や受発注もアプリ上で可能。

利用者同士(企業同士)は、
あたかも大きな“ひとつの企業”のように
取引やコミュニケーションが可能になります。

クリスチャンは続けます。

「僕たち<トレードシフト>は世界をフラット化している。
それは小さな会社が政府とも、このツールでつながって取引ができるという意味でも…」

そして、この話は前述の「政府と市民の互いの信頼」に着地します。

「政府が<トレードシフト>を使えば、その取引が“見える化”される。
そうなれば市民が政府の支出で何に使い過ぎているかをチェックできるようになる。
透明性という点で<トレードシフト>は、いいツールだと思う。
カテゴリー別で政府の買い物が見えるようになるといいね!」

 

90%以上が投票するデンマークの選挙のポスター
90%以上が投票するデンマークの選挙のポスター

 

2カ月にわたってお送りした、クリスチャン・ラング氏を迎えての本連載ですが、
本来は「地方創生と小さな会社」に焦点を絞ったものでした。

地方創生において行政は鍵。

今後<トレードシフト>を利用する先進的な考えの市町村が、
次々と日本に生まれるといいなと思っています。