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売上アップの方法2―守りを固める

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前回、売上アップの本質についてお伝えしました。

どうすれば増収増益の望ましい姿にできるか、ということを考えていく際に、同時に考えておかなければならないことがあります。端的に言えば、「攻め」だけでなく「守り」も同時進行させなければなりません。PPMPのモデルで言えば、売れる「モノ」を作り上げて「カネ」を増やすときの留意点ということです。

 

 

売上規模が同じで業績順調の2社がたどった道

実際にあった例をアレンジして説明します。同じ商品を売っており、売上規模が同じで、業績が順調に推移しているA社とB社がありました。A社の社長は、「この調子でどんどん進もう。他社から優秀な営業マンをどんどん採用して、営業力強化をしていくぞ」という意思決定をしました。

一方、B社の社長は、「ようやく資金的にも余裕ができてきた。そろそろ管理部門を強化して、今後の営業戦略の見直しをしていこう」という意思決定をしました。翌期の売上はA社の方が増加したのですが、3年後はB社の売上がA社を上回り、その後、A社はB社に買収されてしまいました(私はたまたまB社のコンサルティングをしていたので、こうした状況を知ることになったのです)。

A社は「営業担当者の個人の営業力」に依拠した営業戦略を採り、B社は「仕組みとしての営業力」に依拠した営業戦略を採りました。その結果、A社では、契約書が営業担当者によって勝手にアレンジされたり、請求書も発行したりしなかったり、ひどいときには売掛金の回収を営業担当者の判断で「来月まとめて払ってもらえればいいですよ」というようなことが行われていました。

後になってこういう話を聞くと、「それはけしからん話だ。なぜ、そんなことを認めたのか?」と疑問に思われるでしょう。しかし、売上をどんどん上げている営業マンが評価される社風の中で、彼のそうした行動を批判できるような雰囲気も仕組みもなかったのだそうです。買収後に、A社の管理業務状況をインタビューしたところ、結局、契約内容を交渉するのが面倒、請求書を発行するのを忘れていた(あるいは、口頭で伝えたので十分だと思っていた)、代金回収しに行くことは気が引けた、督促するのも面倒だった、という本音が出てきました。

 

当たり前のことができない時には

私自身も公認会計士でありながら、自分の業務では、お客様が満足してくれることが目標となり、請求書を発行し忘れてしまうことがあります。契約内容に基づいてルーチン業務として行う作業ですから、忘れるか忘れないかというレベルの問題です。そして、そのためだけに人を採用するのも採算が合わないでしょう。そういう場合は、できるだけシステム化してしまう他ありません。

当たり前のことが当たり前にできても評価されるほどのことではないのですが、「当たり前のことが当たり前にできない」という状況を作ってしまうと、信用を大きく失う原因になってしまいます。つまり、こうした「プラスにはならないけれどマイナスになる可能性がある」という性質の業務は、システム化するか専門家に外注してしまうことが賢明です。

 

会社の強みと弱みを知るには

管理面でもう一つ重要な欠かせない業務があります。それは管理会計です。増収増益になっている要因は何なのか、データで分析する必要があるということです。業種・業態によって決まった方法はありませんが、一般的には、月別・拠点ごとに、価格、数量、回転率などに分解して考えます。これと合わせて、さらに、商品別、得意先別、担当者別などにブレイクダウンしていき、大きく増減している部分については、その要因が社内にあるのか社外にあるのか、というように見ていきます。

こうした管理会計を行うことで、社内の強みと弱み、そしてそれぞれの要因を明確にして対策を練っていくことになります。例えば、うまくいった営業施策、セールストーク、お客様へのアプローチ方法、面談後のフォローメール、契約内容を変更してほしいと言われたときの対応方法などを全員でシェアして、全員が実践できるようにサポートしていくことができれば、特定の優秀な営業マンに依拠することなく、営業成績は自律的に回復していく仕組み作りができていくことでしょう。

経営を安定させていくためには、「攻め」と「守り」を同時進行していくことの大切さを知り、確固たる営業基盤を作っていく努力を欠かさず行わなければならないのです。

 


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